インドネシアに住んでいて不満なことの一つとして、生き物の図鑑的なものがないことがある。
変わった魚を釣りたいとは思っているが何が釣れるか知らないのではジャワ島では釣り堀に行かないと釣れないと言えないかもしれない。
普通の人は魚に興味がなく、この魚は何ていう魚?と聞いても魚としか言わない。ネットで調べてもどこどこの川で何種類の魚が絶滅したという記事ばかりで、詳しく解説する記事はなかなか見つからない。

珍しく魚の学名入りの調査論文が見つかったので釣りの対象魚として面白そうな魚を探してみる。これは西ジャワ州を流れるチタルム川流域の魚を調査したもの。学名は世界共通だし現地名もあるのがありがたい。
左から現地名、学名、+はその魚が確認でき、−は未確認。チタルム川の上流から下流と3つのダム湖で調査されている。右端は在来種か外来種かの区分。

チタルム川流域にある3つの巨大な水源と北に海へと下るチタルム川は全長約296km、ダム湖にはジャワ島の人々の暮らしを支える発電施設や魚の養殖施設が多数存在している。

実はこのチタルム川、世界一汚染された川の一つとして不名誉な称号が与えられた川である。画像のようなゴミまみれの光景は見たことがないので今は浄化政策が進んでいるのであろう。ゴミ無くても汚いけどね。
魚種リストに戻って魚を一つ一つ確認しよう。メダカみたいに小さい魚は除外する。明らかに間違いである分類分けもあるので軽く訂正しながら調べていこう。
Cyprinidae
コイの仲間
- Hampala macrolepidota ハンパラ
- Barbodes gonionotus ジャワバーブ
- Barbodes bramoides ジャワバーブに似てる魚
- Puntius binotatus モツゴっぽい小魚
- Mystacoleucs marginatus フナに似ている
- Labeo chrysophekadion 黒ラベオ
- Tor douronensis ニゴイっぽい
- Osteochilus hasselti コノシロみたいなフナ
- Cyprinus carpio マゴイ、外来種
- Cyprinus auratus キンギョ、外来種
- Rasbora argyrotaenia アブラハヤっぽい
- Parachela oxygastroides ガラス魚、スケスケ
比較的地味で渋い感じの魚が多い、ルアーで釣れる魚もいそうである。金魚の学名を初めて知った。

中でもハンパラは現地でもルアー釣りで人気の魚である。カスープとも呼ばれ、最大でも40cmほどに成長しトップにもアグレッシブに食いつくので私も好きな魚である。

こいつはかっこいい、90cmにもなるとのことで是非釣ってみたいが未確認となっている。スマトラとかボルネオ行けってことだろう。
他にもニゴイそっくりなTor douronensis がルアー対象魚になりえそうな雰囲気がプンプンしている
Bagridae
ギギ科、ナマズ
- Mystus nemurus モツを餌に釣るらしい
- Mystus nigricepus 小さい
- Mystus micracanthus スポットがかわいい
ネットで検索してこれはカッコいい!と感じたMystus micracanthusは未確認、世知辛い。
Pangasiidae
パンガシウス属のナマズ類、Schilbeidaeは別の科なので表の記載は誤りである。リストの上2種以外はパンガシウス属ではないのでこれも誤りである。
- Pangasius djambal 割と大型になる
- Pangasius hypophthalmus カイヤン、外来種
- Lais hexanema 小さい
- Glyptothorax platypogon 小さいけど見た目はいい
- Ompok bimaculatus バターナマズと呼ばれるらしい。

パンガシウス属の魚は大型になると強烈な引きを味わえる為に東南アジアでは食用だけでなく釣りの対象魚として人気の魚である。
100kgオーバーも珍しくない種。引きは強く、スタミナもある為に釣り堀では1匹釣っただけで体力が奪われる。ただインドネシアで釣れるのは40kgくらいまでだろう。基本的に草食性なので餌釣りだが肉食性の大型種もいる
Glyptothorax platypogonはSisoridae科に属するナマズで見た目は超カッコいい。しかしやはり未確認、カッコいい魚から獲り尽くされてしまうのか。
Notopteridae
- Chitala Lopis ナイフフィッシュ最大種

Chitala Lopisは1mを超えるナイフフィッシュの最大種、ベリーダと呼ばれ、私が怪魚というものに魅せられる原因となった魚。
釣りたい、めちゃくちゃ釣りたい。しかしネットで調べて出てくる情報はジャワ島のベリーダ絶滅という記事ばかり、リストにも未確認となっていた。
野生個体はボルネオなどに生息しているようで、釣り堀でもスポッテッドは入っていてもChitala Lopisが入っている釣り堀は知らない。美味しいらしい。
Claridae
いわゆるクララ、Walking Cat fishとして知られる。
- Clarias batrachus 在来種のクララ

一般的にクララと呼ばれ、沖縄でも繁殖しているというナマズ。インドネシアで食用としてポピュラーな魚、美味い。
中国のドブ川で釣れるバカデカいやつはアフリカからの移入種で別種。もちろんインドネシアにも食用として移入されている。
Siluridae
ナマズの仲間
- Callichrous bimaculatus 上のOmpokに似てる
- Wallago attu ワラゴーアッツー!?
ワラゴーアッツーは体長1mを超える巨大ナマズだがインドネシアで釣れるという話は聞いたことがない。Fish Data Base でも生息地にインドネシアが含まれているが、いくら探してもソースは無い。名前の似たワラゴーレイリーと混同されていると思われる。
ではこの魚はなんだ?と疑問に思い、現地名で検索をかけてみると更に驚いた。

え、インドネシアってグーンシュ釣れるの?
インド、ネパールで人食いナマズとして名高いグーンシュ。2m近くになり世界的に有名な怪魚である。
実際にネット記事にもジャワ島にたくさんいるという記事があった。ただし、”昔は”である。
リストでも未確認なようにここ最近は全く見つかっていないらしい。でも他の島にはいるのでいつかワラゴーレイリーとともに釣ってみたい魚である。
Channidae
チャンナ、いわゆるライギョ
- Channa striatus ストライプスネークヘッド
- Channa micropeltes トーマン 外来種
ジャワ島で釣れるライギョは2種類、トーマンが外来種であることに驚いたがもっといっぱい種類がいると思ってた。

トーマンに関しては知っているし大好きな魚なので特に何も思わない。観賞魚として人気のマルリオイデスやフラワートーマンはボルネオに行かないといない。釣り堀には入ってるけどね。
Gobiidae
ハゼの仲間
- Schismatogobius bimaculatus 普通のハゼ
- Oxyeleotris marmorata マーブルゴビー
- Glossogobius giuris タンクゴビー、コチみたい

ハゼの仲間で有名なマーブルゴビーは高級魚として中国などでも養殖されている。超美味いらしいけど、食べたことはない。
70cm程にまで成長し、魚を捕食する為にルアーの対象魚にもなる。しかし狙って釣るのは難しいだろう。写真の魚は釣り堀で釣ったもの。
Mastacebelidae
トゲウナギの仲間
- Macrognathus aculeatus レッサースパイニーイール
未確認と書いてあるがこの流域以外にはいるみたい。ボルネオのレッドファイアースパイニーイールという魚は一度釣ってみたい。
田んぼの近くを通ると現地の人がタウナギを狙っているのをよく見る。
Chiclidae
シクリッドの仲間
- Oreochromis niloticus ナイルティラピア、外来種
- Oreochromis mossambicus モザンビークティラピア、外来種
- Hemichromis elongatus バンデッドジュエルシクリッド、かっこいい
- Amphilophus citrinellus フラミンゴシクリッド
シクリッドの仲間は全て外来種、そこら中で養殖されており、食用や観賞用として人気。ピーコックバスもこの仲間に含まれる。

自然にいるものも養殖場から逃げたものが繁殖したと思われる。ティラピアに至ってはどこにでもいる。
Anabantidae
グラミーの仲間

- Osphronemus goramy ジャイアントグラミー
- Helostoma temmincki キッシンググラミー
- Trichopodus pectoralis スネークスキングラミー
- Trichogaster trichopterus スリースポットグラミー
- Anabas testudineus キノボリウオ
この中で大型になる魚種はジャイアントグラミーのみ。未確認となっているがめちゃくちゃ養殖されているので釣り堀に行けば出会える魚。
愛らしい顔をしているので観賞用としても人気、体長は60cmを超え、釣り人にも人気だが草食寄りの雑食なので葉っぱやバナナを餌にする。老生魚になるにつれブサイクになっていく。
一般に大型になるのはOsphronemusを冠する4種類のみだがボルネオ島には第四のオスフロと呼ばれている化け物みたいなグラミーがいる。

これが第四のオスフロと呼ばれる魚。ボルネオやブルネイの綺麗な流水域に生息しており、可愛い姿から一変、老生魚の見た目はまさに怪魚と呼ぶに相応しい。
日本からの情報も少なく、非常に魅力的な魚である。釣りたい。釣りたい。

小型のグラミーも美しい魚体から極小のタックルで釣りを楽しむ人達がいる。日本でのタナゴ枠がインドネシアではグラミーなのである。
Anguliidae
ウナギの仲間
- Anguilla sp アンギラウナギ、未登録種
ウナギ、釣りたいというより食べたい。そう言えばインドネシアの日本食レストランではウナギがよくあるがどこ産か分からない。機会があれば調べてみよう。
Mugilidae
ボラの仲間
- Chanos chanos サバヒー
- Mugil sp ボラ科の未分類種
サバヒーはインドネシア、というか東南アジアでは非常にポピュラーな食用魚、ミルクフィッシュ、インドネシアではBandengと呼ばれ、色々な場所で食べることが出来る。釣って料理してくれる釣り堀も各所にある。
Caracidae
カラシン科、ピラニアの仲間
- Colossoma macropomum ブラックコロソマ

南米原産のコロソマも広く養殖されているので逃げて繁殖したものがいるのだろう。
怪魚釣り堀に通っていれば嫌と言うほど釣れるので野生で釣りたいとかは思わないのだが引きは強烈なので自然のフィールドで釣れたら楽しそう。
Lorikariidae
プレコの仲間
- Pterygoplichthys pardalis プレコ

どこにでも大量にいる。汚い川を眺めていると波紋を立てているのは大抵コイツ。カッコいいけど藻を食べる魚なので狙っては釣れないが普通に引っかかってくる。

という訳でジャワ島の釣り対象魚をまじめに考察してみた。とても疲れた。
今なら自信を持って言える、ジャワ島で釣りするなら海か釣り堀行った方がいいよ!!
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