お盆前の超多忙な時期とイミグレのイジメに耐え抜きいよいよ事前に根回ししてきた有給の日がやってきた。
今回のターゲットはパプアンバス、ガイドさんからは雨さえ降らなければ絶対に釣れる、雨だけはダメだとの事前通達があった。
既にアカン雰囲気があるも見て見ぬふりをして飛び立ったのは最近インドネシアでも人気のスポットになっている島だ。
同行者にIさんをお誘いして来て頂いている。
飛行機で移動して船に2回乗り継ぎ、今回滞在する船長の家に到着、ここを拠点に4日間の釣行でなんとか一匹は獲りたい。
初日は移動のみ、来るまでに船上でスコールに遭いびしょ濡れになった体を洗いまったりする。
村には電気が通っておらず、夜だけ発電機を動かして灯りを確保している。水道も通っていないのでトイレや水浴びは井戸水を利用している。
携帯の電波は島に電波塔があり、村まで辛うじて届く為にチャットぐらいならギリ出来る程度、こういう遠征では電波が全く無いことも珍しく無いのでかなり環境はいい。
というか船長の奥さんの作ってくれる料理が美味すぎて毎日の食事が楽しみ過ぎた、事前に注意されていたAgasというブヨみたいな虫にも悩まされなかったし、夜暑くて寝苦しい以外は快適である。
釣行初日、滞在している村に繋がる川を登る形で船を進ませる。
船は丸太をくり抜いたシンプルな船だがヤマハのエンジンを積んでいるので上流まで難なく行けるようだ。
パプアンバスが雨がダメな理由はいくつかあり、一つは雨で水温が下がると活性が下がること、そして水が濁ると極端に口を使わなくなるらしい。
前日も晴れ間は見えることはあってもかなりの量の雨が降っていたので川の水は泥水状態で流れも早い。
道中で何度も雨が降り、軽く川が氾濫してきたので途中で遡上を諦めて釣り降るも全くアタリは無い。
気を取り直してお弁当を食べて違う支流に入ってみるがそのまま一切のアタリは無く夕方になり納竿。
これはいよいよヤバいかもしれんね。
雨がダメだという理由を速攻で実感しつつも村に戻り作戦を立て直す。天気予報が少し改善されており、翌日からの天気が持ち直す可能性が出て来たのである。
とりあえず今日ダメだった川が本命なので水質が回復することを祈って2日目は海に出てからマングローブのあるエリアを回って3日目と4日目に賭けることに。
村では農業や漁で生計が立てられており、今回お世話になった家でもクローブを蕾と茎と葉にちぎって分ける作業を毎晩行っていた。
インドネシアではタバコにクローブが使用されているので馴染みのある匂いに囲まれて私も毎晩ご家族と雑談をしながら作業を手伝った。
2日目は打って変わって晴天、日差しが強くめちゃくちゃ暑い、このまま降らなければ川の水質も徐々に良くなるだろう。
海にほど近いマングローブ林ではバラクーダやマングローブジャックのアタックはあるも本命の気配は相変わらず無い。
ガイドさんも暗に別の魚を狙ってお茶を濁すことを仄めかしだしたがやはり狙いはあくまでパプアンバス。
一匹はインドネシアにいる内に釣りたいんですよ…!
まさかの2日目もボウズ、これは4日間全滅も普通に頭をよぎりだす。船着き場から家までの長い一本道を歩く歩みは重い。
翌日は今日の好天で水質が改善していることを祈って初日の川の上流を目指す。
後は雨が降らないことを祈るだけである。
夜の内に雨は降らなかった、ガイドさんが夕飯の前に明日釣れますようにと皆んなで祈りを捧げてこの日を迎えた。
ガイドさんは夜更かしして顔が腫れたということで今日はお休み、船長と船長の息子さんの操船で上流を目指す。
村を出てすぐに雨が降って来た。雨足が徐々に強まり、こりゃもうダメだと心が半ば折れながらも上流へと4時間ほど船を進めていく。
こんなとこまでIさんを連れてきて貴重な休みに安くない費用を払わせて丸坊主なんて申し訳ないなとずっとネガティブになっていると途中で明らかに水質が良くなってきた。
これはひょっとして…と感じている内に小さいアタリがあり、子バスが釣れたような感覚の後でバレてしまった。
その次のキャストでルアーを潜らせた瞬間に竿が一気に沈む、ついに来た!!!
何が起こったか分からない、竿が一気に引き込まれたと思ったらフッと軽くなりリップだけになったルアーが帰ってきた。
この釣行の為に新調したラパラの木製ルアーがへし折られたことに気付き、恐れで手の震えが止まらない。
漫画かよ!と思いつつも確かな魚の感触に船内は一気に活気付く。
そしてすぐに今度はIさんにヒット、2日間で溜まりに溜まったフラストレーションを吹き飛ばす一匹に雄叫びが上がる、感情が爆発し各々が喜びの声を上げる中、ついに私にも。
パプアンバスという括りで大まかに2種に分けられるパプアンブラックバスとパプアンスポットテールバス、海水でも生活出来るブラックバスに対しスポットテールは淡水でしか生息出来ないようだ。
淡水魚スキーの私としてはスポットテールに興味があったので今回一目見られて超嬉しい。
ちなみにインドネシア語ではIkan sikapla、シカップラと呼ばれるらしく、sikapla merah 赤シカップラ(マングローブジャック)、sikapla hitam 黒シカップラ(パプアンBバス)、sikapla tanda 印シカップラ(スポットテール)と区別されているらしい。
現地では獲れたら食うけど海の魚の方が近くて獲りやすいし、より美味しいので積極的に獲らないというのがインドネシアで限定的な水域にしかいないパプアンバスが残っている理由だろう。
ずっと気になっていたパプアンバスを有名たらしめる世界最強と持て囃される引きに関しては確かに強い。
ゴンッというアタリから一気に下へ下へと絞り込むように潜る動きは私は他に知らないので他の魚との比較が難しい
しかし世界記録は110cmの24kgということで50-60cmの2-3kgでこの引きならデカいのは絶対ヤバいという確信はある。
ともあれめちゃくちゃ楽しい、来て本当に良かった!
船着き場から村までの道のりは軽い、結局この日は2人で7回ほどコンタクトがあり2匹ずつ、計4匹のスポットテールを釣り上げることが出来た。
ボウズを回避出来たこと、スポットテールに会えたこと、後1日を残して釣果が出たことに精神的余裕が半端ない。
村に帰ると皆んなが釣果を祝ってくれた。翌日も釣行を控えているが釣れる気しかしないので気持ちの持ちようが朝と比べて180°反転している、本当に釣れてよかった。
しかし水が少し良くなっただけで速攻で結果が出たので水質がマックスに良い時に来たかったなという残念な思いもある。
まあ休みは決まってるし天気は選べない、今回の釣行も直前まで1ヶ月以上雨は降っていなかったとのことで運が無かった、しかしながらちゃんと釣れたし4日目は更なる釣果も出たし(主にIさんが)、パプアンブラックバスも小さいながらも釣ることが出来た。(Iさんが)
悲壮感が漂った3日目の朝から大逆転で最高と思える釣行になった今回、関わったみんなが私たちの釣果を自分のことのように喜んでくれて人に恵まれた釣行だと思うばかり。
寂しさを覚えながら、帰って仕事に戻る絶望感を味わいながらもまた会いましょうと言葉を交わし島を後にする。
実際また皆んなに会いたいし、船長家のご飯が恋しい。しかし今年日本の盆休みが長かったことで便乗したこの規模の長期休暇がもう取れるかが分からないことが最大の障害である。
ともあれ怪我なく病気なく魚も見れて大満足な釣行でした。
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