時は10月、日本から帰って来てすぐにバンドンの西のはずれにあるサグリンダムへの釣行に誘われていた。
誘っていただいたのはJJJ(ジャカルタジャパンジガ―ズ)という団体の会長を務める方と頻繁に釣りに一緒に行かせて頂いているIさんの御二方である。
IさんもJJJに所属しておりいつも凄い魚の画像をネットにアップしている猛者であるがインドネシアの数少ない釣り情報を発信する者同士、少なからずライバル心を抱かずにはいられない。(超一方的)
という訳でやってきたサグリンダム、バンドン近郊ということで超近い、私の家から1時間で到着する。
ほとんど高速の道程の為か距離の近いKampung Batuと所要時間はさほど変わらない。
御二方はここでワイルドトーマンを狙うようだが私の今日のターゲットは別の魚だ。
ハンパラとかセバラウとかカスープとか国によって呼び名は違うが東南アジアに広く生息するコイ科のフィッシュイーターである。
体長は最大70cm程までに成長し、細長いボディからはスピード感のあるアタックでルアーにもアグレッシブに反応を見せる人気のゲームフィッシュだ。
ここに来たのは2度目だが以前はPeriさんと二人で一隻の船に乗りかなりの釣果が出た。
今回は一人一隻の船に乗り各自で分かれて湖上のポイントを巡る、ちなみに船は1日3,000円くらいでチャーターしている。
この日は釣りを開始して早々に大きなバイトがあったが針に掛からず、そのまま昼になってしまった。
前回来た時には一つの養魚場を一周すれば二人のどちらかが一匹は釣っていたのに・・・
船頭さん曰く雨季に入りたてで水温が下がり、天気も曇っている為に活性が悪いとのこと、結局数回のバイトがあったのみでこの日はボウズでフィニッシュ。
同行した二人は1名がボウズ、1名は見事トーマンをキャッチ出来たらしい。
そして1か月後にリベンジの機会が訪れた。以前カンプンバトゥでお会いしたIさんとKさんの二人が兼ねてからワイルドトーマンを狙ってみたいということで3人でサグリンダムを再び訪れることになった。
この日は朝からコンディションが良くあちこちでハンパラのライズが見える。
ライズしている場所にすぐにルアーを投げ込むと小気味よいアタリと共に魚が針に掛かった。
久しぶりに姿を拝めたハンパラ、20cmくらいなので子バスを釣っているような感じだが美しい魚だ。
カリマンタンのジャングル内の流水域だとマシールに混じって怪物みたいなサイズが釣れると聞くがここでは50cm位が釣れれば万々歳だろう。
その後も頻繁にバイトやチェイスがあるが中々針に掛からない、サイズがかなり小さいようだ。
それでもポッパーやシンペンを投げているとポッパーに激しいバイトがあった。
サイズは30cmちょいか、このぐらいのサイズになるとライトタックルで釣るとかなり楽しい。
ドラグを出しながら激しく走るファイトに取り込みまでの緊張感がたまらない。
この調子でどんどん行こうと意気込んだのも束の間、結局この日はバイトやチェイスは頻繁にあったもののキャッチは2匹のみだった。
ルアーサイズをもう少し落とせば数は釣れたかもしれない。
ハンパラの活性には水温や天気が左右されるようで、この日も船頭さん曰く活性は低いとのこと、また乾季のカンカン照りの日が続いたら数釣りを試したい。
アタリは続いたので粘りたい気持ちはあったのだが、夕方の列車でソロに行かなければならないということで昼前に納竿。
昼時の船着き場は水上レストランへの渡し船があり賑わっている、屋台が出ているので覗いて見ると何やら変わったものが売っている。
屋台のオバちゃんはシーフード!シーフード!と連呼しているがこれは田んぼとかで見かける現地ではTutut(トゥトゥッ)と呼ばれるタニシみたいな貝だ。
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)もたまに見かけるがこれはまた別の種類だろう、オバちゃんは食べろ食べろと勧めてくるがどうにも気が進まない。
それでも試しに食べて見ると想像通りの味で泥臭く、美味しいものでは無かった。
色々話をして写真撮って何も買わないのは悪いと常温で置かれていたヤクルトを買って退散する。
そして翌日、夕方の列車で移動した私はソロにいた。
深夜に到着して眠りこけて目覚めたのは朝の10時頃、明日から出張の仕事ではあるが何もせずにいるのは勿体ない。
次の週末にスラバヤに移動する予定があるので釣具は持って来ている。
しかし近くのBalekambang Soloは現在改装中ということで釣りは出来ない。
それでも何か魚を釣りたいなとやってきたのは町はずれの工場前のドブ。
以前仕事で近くに来て車を待っている間の散策中に見つけたグラミーがいっぱい泳いでいるポイントである。
正直網を入れてしまえば一網打尽出来る浅さであるが網買いに行くのも面倒だしすぐに釣れるだろう。
しかしホテルで練ってきた練り餌を投入するとグッピーの大群に餌を奪われて本命のグラミーに全然餌が届かない。
狭いエリアだがグッピーは数百匹はいるだろう、恐るべき繁殖力である。
試行錯誤を繰り返すがグッピーの猛攻を避けることが出来ない、気づけば3時間くらい経過している。
1時間くらいサクッとグラミーを釣って帰るつもりが延々とグッピーに餌付けしているだけである。
アラフォーの独身男性が貴重な休日に何をやっているんだと自己嫌悪に陥るがここでグラミーを手にせずに帰るのも嫌だ。
網さえ、網さえあれば5秒で掬えるのに・・・
こうなればと練り餌を掴んで腹這いになって水中に手を突っ込む。明らかな不審者ムーブに道行く人たちの怪訝な声が聞こえてくる。
手にはやはりグッピーが群がってきてハムハムしてくる、ドクターフィッシュってこんな感じなんだなと掌に集まる小魚に集中する。
そしてその中にグッピーとは違う魚体が入ったのが見えた。
つかみ取りで獲った魚は初めて見る魚だ、泳いでいるのが見えていたのはスリースポットグラミーだったが、これは違う種類である。
ラビリンス器官が胸に生えているのでグラミーの一種であると断定、色々と調べてみるとクローキンググラミーという魚であることが分かった。
成人男性としての何かを失った代わりに知らない魚と出会えることが出来た。
ある程度はインドネシアの魚を知った気でいたが自然にはまだまだ私の知らない魚が沢山いそうである。
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