6月末、またまた3連休がやってきた。イスラム新年に連なる3連休である。
そろそろ脱インドネシアを目論む身としては後悔の無いようにどっか行っておこう。

またコモド行きてえなあと航空券をチェックしてみると片道3万円、これはキツい。
バリやロンボクも高い、それならばバタムはどうかと見てみると片道1万ちょいとお手頃だ、しかしホテルが高かった。
それもそのはず、今は学生のホリデーシーズンでリゾート地や観光地は家族連れでいっぱいなのだ。

そこで白羽の矢が立ったのはスマトラ島、南スマトラ州の州都パレンバン、航空券が片道¥6,000と激安だ。
コロナ前はバリ島とかもLCCなら片道¥5,000とかだったのに、今では倍以上と厳しい世の中である。

さて今回の目的地パレンバン、現地の観光地とかを検索してみても客を呼びそうな観光地は無い、だが私はとある物を見るためにいつか行きたいなと思っていた。
そしてあわよくば釣りもしたい、しかし釣り友達やガイドさんに聞いてもパレンバンねぇ…昔は沢山魚いたけど…と期待出来るような返答は一切無かった。

ワンチャンでトーマンとみんなが言うので周辺の河川や湖の情報やYouTubeなんかを漁っていると少し移動すれば釣りが出来るとこはあるようだ。
そして色々調べていると興味深い魚の情報が出て来た。

日本ではパービャウという名前で知られる牙のあるナマズである。
カリマンタンの市場でもチラホラ見かけていて機会があれば釣ってみたいなと思っていた。

パービャウという変な名前はタイ語のプラー・ビャウが訛ったもの、インドネシアではIkan Lais Tembiring, ライスとかライス・テンビリン、マレー語圏ではIkan Begahak、ブガハッとかガハッと呼ばれているようだ。

よっしゃパービャウ釣りに行こう!と意気込んではみるものの連休のうち初日と最終日は移動日、実質釣りが出来るのは1日だけで情報も何もない突撃状態なので釣りが出来るかどうかも怪しい。
YouTubeでは釣れているが、流石にポイントまでは分からないし、船や移動手段も未定だ。

まあ幾つかプランを立てて行ってみてから考えますかと行き当たりばったりの旅が始まった。

飛行機は悪名高いやつ、安いし最近は特にトラブルに遭遇して無かったので油断していたら前日にいきなり午前発のフライトがキャンセルになり、午後便に変更になったというメールが来た。
慌てて問い合わせをして同じグループの午前発の便に変更してもらったが空港に着いて時間になっても全然呼び出しがされない。
変更した方のフライトも大幅遅延である。これは前途多難な予感がするぜ、来る途中でオニギリ落っことしたし。

結局パレンバンに着いたのは3時間遅れの午後14:30、しかも前日から違和感を感じていた体調が気の所為では誤魔化しきれないほどに悪くなってきた。
これは完全に熱がある。最近出張続きで深夜の電車移動ばかりだったのであまり眠れてなかったのが祟ったか、電車クーラー効きすぎなんだよなあ・・・
急いでコンビニでマスクと薬を買ってビタミンドリンクをがぶ飲みする。

とりあえずホテルにチェックインしたいのだが、その前に情報収集しないとなのでネットで目を付けていた釣具屋を目指す。

スマトラ島の都市に来た感想はジャワ島と変わらないな、という感じだ。
飛行機の窓からは目に映る全てにプランテーションが広がっていたので都市を出るとアブラヤシやゴムの農場だらけなんだろう。


Google情報で営業中となっていたので安心していたが釣具屋は大体閉まっている。
やはり祝日は休みのところが多いようだ。

何軒か周って開いている釣具屋があったのでパービャウ釣りたいと聞いてみるが、いないことはないが今はシーズンじゃないから難しいと言われてしまう。
確かに雨季によく釣れる魚って聞いたことがある。

ガブス(ストライプスネークヘッド)ならどこでもいるからガブス狙った方がいいよ、と言われてしまう。
出来ればスマトラならではの魚が釣りたいと話していると釣具屋に来ていた客からここがいいという情報を得ることが出来た。

その地域にはパービャウもトーマンもいて船着場に行けば船も出してくれるだろうということだ、そこまで距離も離れていないし翌日の早朝からそこを目指すことを決定。
空港からここまで連れてきてくれたタクシーの運ちゃんがめちゃいい人だったのでチャーターサービスを利用して翌日の移動手段も確保である。

釣りが出来る算段が整ったのでホテルに荷物を預けたらカメラ片手にここに来た目的を果たしに行く。
体調も薬が効いたのか、かなりマシになっている。

これがムシ川、ここのどっかにパービャウが…とはいっても750kmある川らしく都市部の河口付近はもはや運河である。

カプアス川のある西カリマンタンのポンティアナクもそうだがデカい川があるとデカい都市も栄えるのだろう。

水深も30mあるらしく、流石に釣りをするならもっと上流か支流に行くしかなさそう。

パンガシウスを狙っているらしい、馬鹿でかいオモリを付けていたがここで釣果はあるのだろうか。

ここが今回の目的地、そう、パレンバンはベリーダの街と言われるほどベリーダが象徴になっている場所でこの大きなモニュメントを見ることが今回の訪問の目的だった。
ベリーダではなくベリードと表記されている理由は南スマトラの方言ではインドネシア語で語尾がAの単語がしばしばOに変わる為とのことだ。

このブログのアイコンやヘッダー、フッターもベリーダに設定しているように私はこの魚が大好きでいつかパレンバンに聖地巡礼したいと常々考えていたのである。

パレンバンは古くからペンペッという魚のすり身とタピオカ粉を混ぜて茹でたり揚げたりした料理が郷土料理として親しまれており、その材料としてベリーダが利用されてきたのである。

しかし昔は大量に獲れていたベリーダの漁獲量も年々減り続け、今ではインドネシア在来のベリーダ4種は絶滅危惧種として水産省よりシーラカンスやアロワナと同枠の完全保護という指定がされるに至っている。

スマトラでのベリーダに対する規制は特に厳しく、捕獲や消費目的の取引に高額の罰金が定められている為に市場からベリーダは姿を消したとのことだ。





・・・観賞魚市場では普通に売っているがブリード個体はセーフっぽい?捕獲と食用の為の取引というプロセスが無ければいいという感じか、アジアアロワナも同じようなもんだったね。
そういえばジャワ島で絶滅宣言がされていたチタラロピスも最近の研究でちょろっと生き残っているということが分かったらしい。
食用資源として有用なら政府主導で養殖出来ればいいのにな。


ジャワ島のダム湖のスポッテッドは増えて困っているらしいが、在来のベリーダが減り続けているのは非常に残念である。

今はペンペッの材料はベリーダからライギョやサワラなんかに切り替わっているが流石郷土料理だけあってどこにでも店や屋台がある。


声を掛けられる度にお邪魔してペンペッを食べているが美味い、甘いポン酢のようなタレも非常によく合っていてパクパクいけてしまう。
要はさつま揚げとかおでんの天ぷらみたいなもんなので食べる前から不味い筈がないと安心出来る料理だ。

一個¥10前後と財布にも優しい、ジャワ島でもレストランや屋台は沢山あるがあまり食べる機会がなかったのでここぞとばかりに食べまくる。豆腐入りのやつがお気に入りだ。
ここにきて体調はどんどん悪くなっている、こうなったら大量にカロリーを摂取して明日の為のエネルギーをフルチャージしておこう。

タクシーの運ちゃんに風邪の時はパレンバン名物のピンダンを食うといいと言われていたのでそれっぽい食堂に突撃。

値段が書いて無いメニューに少し不安を覚えつつも注文したのはガブスのお頭入りピンダン、どうやら魚のスープ料理のようだ。

一口食べてみて驚く、これトムヤムだ。そしてめちゃくちゃ色々なスパイスが効いていて超美味い。
タイならトムヤムプラーチョンといったところか、魚も美味いしスープも相当レベル高い、これは確かに風邪に効きそうだ。
ご飯とジュース付けて¥1,000とそこそこ良い値段したがこれなら納得の味である。

インドネシアでも恐らく1.2を争う体に悪そうなスイーツ、マルタバッもいっちゃおう。
パンケーキに大量のマーガリンを塗りたくり、これでもかという程の練乳とナッツとチョコ、好みでチーズやバナナなんかを挟んだおやつである。

めちゃくちゃ疲れてる時に無性に食いたくなるけど一切れ食べればたちまち罪悪感が湧いてくる、スニッカーズとか好きな人にはたまらないだろう。

3切れほど食べて限界を察知し、周囲にいる人達に手伝ってもらって完食、これも美味い!

ベリーダ像がライトアップされるのを期待していたが何かイベントの時じゃないとライトアップされないらしい。
イスラム新年なので期待していたのだが残念だ。

ちなみに起動時は口からマーライオンみたいに水が噴射されるらしい、見たかった。ほんとに見たかった。

奥に見えていた橋はムシ川を渡るAmpera橋、何でも日本の戦後補償で建設されたらしい。

実はここパレンバンは太平洋戦争の際に油田を有するなどの重要な拠点としてオランダ軍が駐在しており、日本軍がパレンバン作戦と呼ばれる落下傘部隊による襲撃で占拠に成功したという歴史があるようだ。全く知らなかった。

ベリーダ像のある海浜公園的なとこはアイコニックなアンペラ橋が見渡せる観光地としてかなり賑わっている。
子供が沢山いる場所は夜でも安心して散策することが出来る、それでも人混みではスリなどに注意は必要である。

観覧船もいっぱい出ていてムシ川のクルージングを楽しめるようだ、少し鬱陶しい程客引きのオッチャンに声を掛けられた。

時間は19:00過ぎ、体調がやはり思わしくないのでホテルに戻ることにする。
夜道を歩いて帰るが財布やカードは念のためホテルに置いて来ている、スマトラの治安はあまり良いとは言われていないからだ。

スマトラ島は北の方がマジでヤバいと聞くが、南はどうなんだろう。
とはいえあっちはヤバさのベクトルが巨大麻薬シンジケートとかマフィアとかそういう方向なので変なとこに迷いこまなければ普通に滞在したり観光する分に問題は無いんじゃなかろうか。

犯罪件数の統計を見ればインドネシア一治安の悪い地域はジャカルタやスラバヤということになるんだけど、この辺は認知されない犯罪が多そうなのがなんとも言えない。
アチェやメダンが麻薬カルテルの温床になっていることは外国人の私でも知っているのに麻薬が重罪のインドネシアにおいて撲滅されないことからも御察しである。

とにかく変な人に近づかない、変なとこ行かない、怪しい人は信用しないを心掛けて帰路に着く。
しかしパレンバンは道が広い割に横断歩道や歩道橋が少なすぎる、当然のように交差点以外は信号も無い。

歩道橋は昔はよく注意喚起されていた挟み撃ち強盗の危険性があるのであまり通行は推奨されていない、そうなると道路の横断が無難だが交通量の多い道路を渡るのも大変だ。
インドネシア式道路横断術を習得していないとかなり苦戦するだろう。

今回のホテルは一泊¥3,000とリーズナブルなのに部屋は広くていい感じ、最近ジャカルタもバンドンもホテル高いから助かる。
さて明日はいよいよ釣りに行こう、薬を飲んですぐに眠りについて初日が終了。

コメント