今年の始め頃、まだインドネシアのコロナ状況が今ほどひどくなかった頃に毎週末どこにいこうか、どの魚を釣ろうかとインスタで情報を漁っていた。釣りたい魚を決めてそのハッシュタグで釣れている場所をひたすらに調べていく作戦だ。
今回のターゲットはダトニオイデス。アクアリウムを趣味とする人には馴染み深いらしいが私はこの魚のことを全然知らなかった。
東南アジア原産のマツダイ科の魚で完全肉食性のフィッシュイーター、種類にもよるが50cmほどにまで成長し、国によっては個体数が減り保護対象になっている魚である。
インドネシアではボルネオやパプアにその固有種が生息しており、道端のアクアリウムショップでも高額で取引されている。見る限りアロワナの次に高い。見た目は海の魚っぽいが淡水魚である。是非とも一度は釣ってみたい。
そしてジャワ島でダトニオイデスが釣れる場所の候補が挙がった。一つはスラバヤ近郊のMonstero Fishing Park、そしてもう一つがVillaku Kuningである。どうせならデカいのが釣れるほうでしょ、と大きい魚の写真がある方に決めてすぐにDMを送ってコンタクトを取った。
何でも現在リフォーム中とのことで、もうすぐリニューアルオープンという情報を得て先の祝日を含む連休にオープン後一番に入れるように予約を入れた。
Villaku Kuning
直訳すれば「私の黄色いヴィラ」というシンプルな名前だ。ここの特色は宿泊施設内に釣り池があり、宿泊者限定のサービスで釣りが出来るということである。つまり泊まらないといけないが、滞在している間に思いっきり一日中釣りが出来るのである。
放流されている魚種はバラマンディ、ワラゴーレイリー、ティラピア、パーカーホ、スルタンフィッシュ、ピーコックバス(テメンシス)、パンガシウス、レッドテール、そしてダトニオイデス等々多岐に渡る。
料金設定は4人部屋1泊約¥8,000、20人部屋一泊約¥40,000となっており、私は4人部屋を二泊分選択した。インドネシアなら5つ星ホテルに泊まれる値段だが、一人での利用ということもあり仕方なし。まだ見ぬ怪魚に思いを馳せながら連休が来るのを待った。
アクセス
首都ジャカルタから南東、バンドンから西、ちょうど真ん中あたりに位置するCianjurは山岳地帯ということで高速等は無く、下道を進むことになる。運転手さんには送ってもらってまた二日後に迎えに来てもらうということで1万円ほどで交渉をした。車以外の交通手段は無いと思って良い。
ヴィラのマネージャーの話では渋滞に巻き込まれるとジャカルタから8時間もかかることもあるそうだ。
1日目
そして当日、10:00頃にチェックイン出来るからと朝の7:00頃に私の住むバンドンを出発する。移動中は出発した瞬間寝てしまい、気づいたら目的地近くに着いていた。昨夜はドキドキして眠れなかったのだ。
食事は基本出ないと聞いていたのでコンビニで飲み物やお菓子、カップ麺などを買い込んでいく。遠足におやつは基本中の基本だ。
ヴィラは普通の道路の途中に門がぽつんと有るだけで看板も小さく、普通に見過ごしてしまっていたが何とか到着できた。
中に入れてもらうとDMでコンタクトを取っていたマネージャーが迎え入れてくれる。リニューアルオープンに自身の家族を招待していたようで、高額の20人部屋、というよりむしろ一軒家を借りて休暇を満喫するようだ。ちなみに彼らは普段ジャカルタで生活しており、ここは管理人さんが複数人離れで住み込みで管理している。
管理人さんを紹介してもらい、部屋に案内してもらう。何人かいたが印象に残っているのは日本語の出来るおっちゃんだ、便宜上彼のことをA管理人と呼ぶ。
過去に日本で働いていた経験があるらしい。日本人の宿泊は初めてとのことで色々な日本語を披露してくれた。しかし彼との出会いはこの後、後味が悪いものとなってしまう・・・
部屋は簡素な感じだ。ここで4人寝ろと言われたら明らかにベッドを巡ってリアルファイトに発展する狭さだ。インドネシアによくあるアパートのような作りで、私一人ならば全く問題は無い。Wifiはまだ通していないと言っていたが今後追加されるのかは分からない。エアコンは無いが日中以外は涼しく、無くても何とかなる、むしろ寒かった。
何はともあれ釣りが出来ればそれでいい、釣り池は正直小さい。地元でよく見る田んぼの上の溜め池レベルだ。しかしここに多種多様な怪魚がひしめいているということで期待が膨らむ。
しかもリニューアル後ということでここ数カ月他の客は来ていない。マネージャーが色々と教えてくれ、エサも用意していてくれた。ダトニオイデス釣ってくれよ!と嬉しい言葉をかけてくれる。
今回はまだベイトリールを日本から取り寄せる以前の為、現地で購入したスピニング二本を持って来ている。バスロッドとジギングロッドだが糸はどちらも大物用にPE4号を巻いており、予備で小物用にPE1号を巻いたものを用意している。
まずはルアーを試す。際を探るが水中に倒木が多く、かなり引っかかってしまう。本当に野池のようだ。1時間程ルアーを巻くも反応は無い。
懸念点はここの気温が非常に低いこと、山岳地帯ということだが、雨季で太陽が出ていないことも有り普通に肌寒い。熱帯魚は雨の水温低下で活性が落ちることがしばしばある為に少し状況は悪そうだ。
ワームに切り替えてゆっくり巻いていると不意にアタリがあり、竿が引き込まれた。管理人やマネージャーの一家が沸き、スゴイネーという怪しい日本語が飛び交っている。強い引きで糸を引き出しながら釣り池を縦横無尽に走る。まるでコロソマのようだ!
おまえかい!
引きは一級品だが本当にどこででも釣れるのでありがたみは無い。ごめんね、釣りたいのは他の魚なんだ・・・
マネージャーに餌釣りにしろよと促されて即座に餌釣りに切り替える。そこにプライドは無い。釣れればいいのだ。小さなコイに針をかけて泳がせるとすぐにアタリが来た。何が来ているのかは分からない、しかしものすごい引きだ。竿をのして糸をどんどん引き出していく。ギャラリーも沸いている。
10分程の格闘の後に上がってきたのは1mをゆうに超えるレッドテールとタイガーショベルノーズの交配種だ。交配種は本家のレッドテールと引きはかなり異なる。どちらかと言えばタイガーショベルノーズ寄りだ。ここまでの大物が釣れるとは思っていなかったので正直驚いた。
休憩をしているとマネージャーがこっちも使ってみろ、と食べていたかき揚げを半分渡してくれた。こんなので釣れるのかと疑問に思ったが、投入してすぐに竿がうなった。これもなかなかの引きだ。パティン(パンガシウス)だ、というマネージャーだが、上がってきた魚体を見て驚きの声を上げた。
コイ科の最大種パーカーホだ。本場のタイでは3m、300kgという魚がいるという噂の世界最大の淡水魚の一角だが、これは60cmくらい。予期せぬ魚の追加にとても喜ぶ。かき揚げって魚も好きなんだね。
その後マネージャーの一家の参戦も有り、道具を貸してのんびりする。時間はたっぷりあるから焦らずいこう、なんて初日特有の余裕をかましまくっていた。
あっという間に夜になった。朝から何も食べていないこともあり、夕食を食べれる場所をA管理人さんに聞くとバイクで連れて行ってくれるというのでお言葉に甘える。
バイクは夜道をすいすい走っていく。普通に美味しそうな屋台やレストランを素通りしていくので、どこにいくの?と聞いて見るとお勧めの店があるという。数分で着くだろうと考えていたが30分くらい走っている。道が悪いので尻が非常に痛い。
着いたのは大きめの大衆食堂でその辺にもある感じの店だ。A管理人さんと二人で注文してガブガブ飲んで食う。支払いは私なんだろうなとは思っていたがそれにしても遠慮が無い。でもなんでこんな遠くまで来たの?と聞くと「ワタシ、オニクキライダカラ・・・」
単にお前が食いたかった店かい!
脱力感を覚えながらちゃっかり夜食まで注文したA管理人さんの分も支払い、また30分かかる悪路を通ってヴィラに戻る。なんだか疲れてしまった。二泊三日ということで明日は朝まで夜釣りだなと考えながら早めに寝ることにする。
今考えれば初日から全力で釣りをしていれば良かったのだ、そしてここから不運は始まった。
その②へ続く
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